学会長挨拶

夏秋 優(兵庫医科大学皮膚科学)

日本衛生動物学会 会長(2020-)

 日本衛生動物学会の第24期学会長を拝命いたしました夏秋 優です。私は皮膚科臨床医ですが、皮膚疾患の原因となる有害節足動物に興味を持ち、長年に渡って研究を続けてきました。今後は、幹事や各種委員の方々のご協力をいただきながら、本学会の更なる発展を目指して尽力したいと存じます。会員の皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

 我々が研究対象とするのは、吸血、刺咬、寄生、伝染病の媒介、そして不快感を与えるなど、人間の肉体的・精神的な健康を妨げる有害動物です。そしてその形態や分類、生態などを研究し、生息状況や被害の実態調査を行うと共に、それらによって起こる疾患の原因、病態、発症機構、治療および予防対策などについて研究する学会が日本衛生動物学会です。日本衛生動物学会は1943年に日本衛生昆蟲学会として発足し、1949年には第1回大会が開催されました。そして1950年には現在の日本衛生動物学会となり、2021年までに73回の大会を開催してきました。

 しかし、2020年の第72回大会は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、残念ながら現地開催が急遽中止され、すでに公表されていた要旨集による誌上開催のみとなりました。そして2021年の第73回大会はオンライン開催を実施することで、会員が会場に参集することなく、研究成果の発表を行うことができました。新型コロナウイルス感染症については、まだ収束の見通しが立たない現状ですが、今後も最大限の注意を払いつつ、学会としての活動を継続する必要があります。会員の皆様におかれましては、感染対策を実施した上で、それぞれのテーマについて粛々と研究活動を続けていただきたいと思います。

 世界は現在、コロナ禍の中ですが、日本国内では重症熱性血小板減少症候群や日本紅斑熱などのマダニ媒介性感染症が広がりつつありますし、国内への侵入・定着が危惧されるヒアリなどの外来生物の動向にも注目する必要があります。トコジラミによる刺症被害も継続して見られており、コロナ後の人の移動の増加と共にさらに被害が拡大する可能性があります。海外との交流が再開されると、デング熱やジカウイルス感染症などの蚊媒介性感染症が国内に持ち込まれるリスクも増加することが予想されます。その他にも、各種の有害節足動物や害獣の実態調査や対策など、我々が行うべき課題は山積しています。当学会としても、関連分野との連携を推進し、会員の活動を支援できるよう活動していきたいと思います。そして、日頃の調査や研究の成果は学術集会で発表し、学会誌「衛生動物」に投稿することで論文として記録することが、会員相互の知識の共有になると共に、会員以外へも広く情報を開示することが社会貢献になります。そのためにも、多くの会員が参加し、親睦を深めることができる大会を開催すること、そして学会誌の内容の更なる充実を図ることが重要と考えております。

 会員の皆様が元気で活動を続けられますことを祈念し、大会では会員の皆様にお目にかかれることを楽しみにいたしております。

(2021年6月23日)